墓守コラム

樹木葬の2つの種類 里山型と霊園型をわかりやすく解説

これまでお墓といえば石のお墓が一般的でした。しかし最近ではさまざまなお墓が登場しており、そのうちの代表格が樹木葬です。樹木葬とは一体どのようなお墓なのか。その基本をわかりやすく解説します。

樹木葬は、樹木を墓標としたお墓

樹木葬とは、その呼び名の通り、樹木を墓標としたお墓のことで、樹木や草花を礼拝の対象とします。個別に樹木を植えたり、シンボルとなる樹木に手を合わすなど、礼拝の方法もさまざまです。また、骨壷のまま土中に納める、骨壷から遺骨を出して埋葬する、カロート(納骨室)を設けてその中に埋蔵するなど、埋葬方法もさまざまです。

樹木葬が注目されている理由

樹木葬が注目されているのにはいくつかの理由があります。

●自然環境に配慮したお墓

樹木葬では、広大な霊園の造成や墓石の切り出しなどを伴わないので、自然環境に配慮したお墓として人気を集めています。

●墓じまいが不要

樹木葬では墓じまいが不要です。必要なケースもありますが、墓石ほど大がかりではありません。

●草木や草花などの明るい印象

従来の石のお墓よりも、草木などの緑や明るいお花の雰囲気が好まれています。

●建墓に比べてコストがかからない

樹木葬では遺骨を土の中に埋葬して、樹木を植えるだけです。またモニュメントやカロートを用いる場合もコンパクトなものがが多いため、一般的なお墓を建てるよりも費用を安く抑えられます。

このように、自然環境やお財布に優しいことから注目を集めている樹木葬。詳しく見てみると、山林を利用した「里山型」と、都市型霊園の一角に設けられた「霊園型」とに分けてられます。次章ではそれぞれの特徴を詳しく解説してまいります。

里山型 大自然の里山全体を墓地とする

里山型では、大自然の里山全体を墓地として利用します。山林の中で区画を分けて、割り当てられた区画の中で遺骨を土中に埋葬し、草花を植樹して墓標とします。

時代のニーズに応えつつ、里山の環境保全に務める

「自然の中に眠りたい」「承継不要のお墓がほしい」などのニーズに応えるお墓として、注目を集めています。

こうした利用者のニーズに加えて、里山型の樹木葬のもうひとつの目指すところは、里山の環境保全です。人の手の加わらない山林はすぐに荒れてしまい、やがてはその地域に住む人々の生活にも影響を与えかねません。日本における樹木葬の先駆けは、岩手県一関市の祥雲寺による「樹木葬墓地」ですが、前住職の千坂峰彦さんは、「地域の生命である川をなんとかしようと地域の活動を始める中で、樹木葬を着想した」と言います。

こうした理由から、里山型の樹木葬では、カロートや石造物などを用いません。まさに、自然環境だけで行われる埋葬なのです。

理念は崇高 でもハードルも高い

しかし、里山型の樹木葬の実施にはたくさんのハードルがあるのも事実です。

●山林で行われるため、地方や郊外に限られる

里山型の樹木葬は山林の中で行われます。山林を保有している宗教法人でなければ実施できません。すると必然的に場所は地方や郊外に限られます。納骨やお墓参りをしたいと思っても手軽に行ける距離ではありません。

●墓地としての許可がおりづらく、絶対数が少ない

山林を「墓地」として利用するには、都道府県知事から許可を得なければなりません。そのためにはさまざまな手続きや調整が必要となり、大変な労力が強いられます。こうした理由から、絶対数が少ないのが実情です。

●山林の管理が大変

自然の山林では草木がどんどん自生します。定期的に人の手が加わらないと山はどんどん荒れていきます。そうした問題の解消を目指すために始められた樹木葬ですが、過疎化の進む地方や郊外で山林の管理を維持するにだけでも大変な苦労がともないます。千坂さんも「里山の自然は放置しても、手を加えすぎてもだめで、植生の遷移をとめるために適度の手を加える必要があることだ。そのため、墓石の場合よりも比較にならないほどの資金と労力がかかることを覚悟しなければならない」と語るほどです。

このような理由から、里山型の樹木葬は、理念こそ崇高ではあるものの、広く普及しているとは言い難いのが実情です。

霊園型 都市の中に作られた樹木葬区画

里山型の樹木葬は、墓地を運営する側も、利用する側にも高いハードルがあります。しかし、樹木を墓標としたお墓へのニーズはやまず、こうして生まれたのが霊園型の樹木葬です。

要は一般的な霊園の中に樹木葬の区画を設けたものです。また中には樹木葬専用の霊園もあります。

現代のトレンドとなりつつある霊園型樹木葬

最大の特徴は里山ではなく都市の中に設けられていること。ですから、大自然の中での埋葬というわけにはいきませんが、墓標を石ではなく樹木にすることで、「費用を安く抑えらえれる」「墓じまいが不要」といったお墓が実現可能になりました。

鎌倉新書によるアンケート調査では、2018年に全体の30.0%だった樹木葬の割合は、2019年には41.5%までに伸び、一般墓や納骨堂を超えて1位に踊り出ました。

霊園型樹木葬 3つの種類

霊園型の樹木葬では、カロートやモニュメントなどの石で作られた構造物を用います。その方法は次の3つに分けられます。

●個別型

個別型では、個別の区画が割り当てられます。その区画の中で遺骨を埋葬し、草花を植樹してお参りをします。埋葬場所にはカロートが設置されており、骨壷のまま納めるのが一般的です。これはお参りの人がいなくなったあとに永代供養に切り替えるためです。中には土の中に直接埋葬するところもあります。

●個別カロート・シンボルツリー併用型

個別カロート・シンボルツリー併用型とは、遺骨は個別のカロートに納めますが、礼拝は共有のシンボルツリーに向けて行うというものです。カロートにはふたをしなければならないため、故人様の名前などを刻んだ石のプレートや、コンパクトなモニュメントなどが設えられます。

●集合型

集合型では、一箇所に遺骨を合祀し、共有のシンボルツリーに向けて礼拝します。樹木葬版の永代供養墓と思えばよいでしょう。

いかがでしたでしょうか。里山型と霊園型のそれぞれに特徴がありますが、今選ばれている樹木葬のほとんどは霊園型ですが、その理由もおわかりいただけたかと思います。

しかし、昨今のトレンドでもある樹木葬にもさまざまな問題点や注意点があります。別の記事で詳しくまとめていきますので、ぜひともこちらもご覧ください。

<参考文献>

●槙村久子『樹木葬墓地の多様化とその意味と背景 そして共同墓の進展』

●鎌倉新書『【第11回】お墓の消費者全国実態調査(2019年)霊園・墓地・墓石選びの最新動向』

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