墓じまいをして心苦しい思いに悩まれている人はいませんか?
しかしよく考えていただきたいのですが、いまあるお墓がなくなったからといって、手をあわせる場所そのものがなくなるのでしょうか? ご先祖様を心の中で粗末にするのでしょうか?
そんなことはないですよね。墓じまいをする多くの人は、いまあるお墓を処分して、新たな場所にお墓を設けます。
墓じまいという負のイメージがついた言葉が先行しているだけで、実は墓じまいというのはお墓のお引越しのことなのです。
世間で言われている墓じまいがいったいどういうものなのか、この記事を通じてもういちどおさらいをしてみましょう。
目次
墓じまいは、手を合わす場所を移すだけ
墓じまいと聞くと、お墓そのものをなくしてしまうと連想しますよね。それは半分は正解で、半分は不正解です。
墓じまいとは、いまあるお墓を解体撤去して、中の遺骨を取り出して、墓地を更地にしてしまうことです。
墓石や墓地はきれいになくなってしまいますが、遺骨は残ります。当たり前のことかもしれませんが、これがとても大切なことなのです。
つまり、墓じまいをしたあとに遺骨はしかるべき場所に移さなければなりませんし、そこでもまた、私たちは手を合わせます。
墓じまいはあくまでも遺骨の場所、そして手を合わせる場所を変えるだけのことなのです。新しくお墓(樹木葬や納骨堂も含める)を構える人も、永代供養にする人も、そこで手を合わせるという行いそのものは変わらないわけです。
墓じまいをする2つの理由 「遠い」「あととりがいない」
墓じまいのほとんどは、次の2つの理由によって行われます。お墓が遠いことと、その家にあととりがいないことです。
それぞれの場合で、墓じまいをどのように考えればよいのか見ていきます。
遠くにあるお墓を近くに引っ越す
故郷のお墓が遠いことが理由で墓じまいをする人は、自分たちの住まいの近くに新たなお墓を設けて手を合わせます。ですからこれは「墓じまい」と言うよりは、「お墓の(お骨の)お引越し」と表現した方が正確です。
この、お墓のお引越しには次の4つが考えられます。
●いまあるお墓を解体して、新しい墓地に移設する
●いまあるお墓を処分して、新しい墓地に新しい墓石を建てる
●いまあるお墓を処分して、納骨堂を契約する
●いまあるお墓を処分して、樹木葬を契約する
いずれにせよ、新しい場所にご先祖様をお祀りしてきちんと手を合わせるわけですから、これを「墓じまい」と呼ぶべきかどうかは、考え直さなければなりません。
そしてなにより、バチあたりなんかではありませんよね。頻繁にお参りできるためのお引越しなのですから、ご先祖様を粗末にしているどころか、大切にしていることの表れです。
墓じまいは、子孫としての責任を果たす立派な行い
一方で、どうしてもあととりがおらずこれ以上墓守ができないという場合は、いまあるお墓をそれこそ墓じまいして、遺骨を永代供養に出します。
そうすることで、ご先祖様の遺骨は永代にわたってお寺に供養してもらえますし、最後を託されたあなたにも、安心感や安堵感がもたらされます。
あととりがいないのであれば墓じまいは仕方がありませんし、バチあたりなんかではありません。むしろ、子孫としての責任を果たす立派な行為です。
墓じまいすらされずに放置されてしまっているお墓、いわゆる無縁墓は、日本中を見渡してごまんとあります。
それに比べると、自分たちが元気なうちに墓じまいをするということは、それだけご先祖様を、そしてお墓を大切にしていることの表れでもあるのです。
ですから、墓じまいを決してバチあたりだなんて思わないでください。
墓石はそんなに「やわ」じゃない いつまでもどっしりとそこにいる
「墓じまい」ということばがあちこちから聞かれるのは、墓石業界の人間としてはなんとも悲しい話ですが、手を合わせるみなさんの立場に立てば、これはもう仕方のないことです。
「墓じまい」というネーミングがあまりよくないのだと思います。なんだか悪いことをしているみたいで、そこに一種の罪悪感が付きまとるのでしょう。
私たちも、墓じまいを推奨しません。いますでにお墓を持っている方には、せっかくご先祖様が作ってくれたお墓を手放してほしくないですし、これからお墓を考えている人たちには、石でできたお墓を建ててほしいと思います。
しかし、お墓というのは簡単にはゆるぎません。少なくとも、死者の亡骸を埋葬し、霊魂を供養するという人類の営みはこれまでも、これからも、変わらないからです。
そして、さまざまなお墓の形がある中で墓石が用いられるのは、石だからこそ、いつまでもどっしりとそこにいてくれるからに他ならないのです。
石は硬くて重くていつまでもいつまでも長持ちします。たとえ現代が墓じまいの時代だとしても、お墓そのものがなくなることは絶対にないでしょう。
仮に永代供養にするのだとしても、そこに建てられているもののほとんどは、やっぱり石のお墓なのですから。
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