屋内型のお墓として納骨堂が選ばれています。天候に左右されずに楽にお参りできるだけでなく、寺院に併設されていることが多いため、将来的に永代供養にしてもらえる点が、人気の理由として考えられます。少子高齢化という世相を反映したお墓のスタイルとも言えるでしょう。
しかし一方で、遺骨がずっと土に還らずにいることに違和感を覚える人や、お参りの度にお寺の中に入らないといけないことに負担に思う人がいるのも事実です。
納骨堂とは、いったいどのような場所なのでしょうか。
目次
納骨堂とはどんな場所?
納骨堂とは、納骨をするための専用の建物(お堂)です。「屋内型のお墓」などという表現がよく見られる通り、それらの多くは堂内に「納骨壇」を並べ、その中に遺骨を安置し、お参りの人は手を合わせます。
納骨堂の始まり
死者を祀るための建物は、昔から「霊廟(れいびょう)」や「霊屋(たまや)」などがありましたが、現代的な納骨堂の起源は定かではありません。高度成長期の昭和40年前後から急速に火葬が普及し、それにともない納骨堂の建設がブームになったと言われています。
世界中のあらゆる地域と同じで、日本でも死者の埋葬はいまだに土葬が主流でした。葬儀のあとに葬列を組んで、親族や村の人たちで遺体を共同墓地まで運び、遺体は墓穴の中に埋葬しました。こうした昔ながらの葬法は戦後もなお行われていましたが、やがて火葬が推奨されだし、それに伴い納骨堂が作られていったものだと思われます。
火葬や納骨堂が普及していった背景には、衛生的な観点に加え、合理性や経済性などの理由が挙げられます。一軒一軒の家が墓石を建てるよりも納骨堂の方が少ないスペースで済みますし、一軒一軒が負担する費用も安く抑えられたのです。
遺骨の預かり方 納骨壇の並べ方
もっとも素朴な納骨堂は、預かった遺骨や位牌をお寺の本堂に一角に並べておく、あるいは集めておくというもの。跡取りや墓守のいなくなった家の遺骨をお寺が引き取って永代供養するのです。こうした方法を採用するお寺はいまでも多く見られます。
納骨堂という専用の建物があるわけではないものの、お寺のお堂の中で遺骨を預かり、手を合わすという点では、納骨堂の原初的な形だと言えるでしょう。
遺骨や位牌をただ集めておく、棚に並べておくのではなく、それぞれをきちんとした場所でお祀りするために納骨壇が設置されるようになりました。そして納骨壇を並べるための専用の建物が納骨堂です。
納骨堂を持たずに納骨壇を設置しているお寺もたくさんあります。そのようなお寺では、本堂の裏や余間(よま:本堂の左右に配された空間)など、さまざまな空きスペースに納骨壇を設置します。
納骨壇は、「ロッカー型」や「仏壇型」など、形状によってさまざまです。最近では都心部を中心に、完全機械制御の建物の中で、遺骨が自動で搬送されてくるハイテクでモダンな納骨堂も注目を集めています。
納骨堂 3つの種類
納骨堂は、主に次の3つの種類に分類されます。
ロッカー型
ロッカー型とは、コインロッカーのような形状の納骨壇です。購入した区画の中に遺骨を納めます。位牌やお供え物などを一緒に入れることも可能です。1列を縦に3段~5段程度に分けて作られているものが主流です。省スペースでコンパクトなため、費用を安く抑えられますが、上下左右を他の区画に挟まれているため、窮屈に感じる人も多いでしょう。また、納骨壇の前で礼拝もできますが、スペースに限りがあるため、堂内に共用のお参りスペースを設けられています。
仏壇型
仏壇型とは文字通り仏壇の形状をした納骨壇です。上下2段構造になっており、上段が仏壇、下段が納骨スペースです。仏壇の中には、その宗派の本尊、位牌、線香やローソクなどのお供え物を並べます。納骨壇は原則的に火の使用が禁じられているため、電気で点灯するローソクや線香が用いられます。また、下段の納骨スペースには複数の遺骨が安置できるため、家族利用として選ばれています。
自動搬送型
自動搬送型とは、都心部でよく見られるハイテクでモダンな納骨堂です。「ビル型」や「マンション型」などとも呼ばれます。礼拝スペースと遺骨の保管スぺースが完全に区別されているのが特徴です。お参りの人が来ると、バックヤードに保管されている遺骨が参拝ブースまで自動搬送されます。館内は完全機械制御で、建物への出入りやお墓参りなど、すべてカードキーやタッチパネルで行われます。モダンで落ち着きのあるインテリアも特徴的です。都市部の土地不足問題を解決する納骨堂として注目を集めています。
納骨堂の供養の期間と永代供養
納骨堂に預けた遺骨はいつまで安置してもらえるのでしょうか。これは、お寺によってさまざまです。
一般的なお墓と同じように、永代に渡って供養できるタイプのものが一般的ですが、跡取りがいない人のために、10年、20年、30年など、有期限で契約する納骨堂も多く見られます。
納骨堂を購入する人の多くは、その後の永代供養を見越している人がほとんどです。いざお参りの人がいなくなったら、納骨壇の中から遺骨を取り出し、お寺が永代供養として合葬します。墓石の解体や改葬の手続きなどを伴う墓じまいに比べて手間と費用がかかりません。
こうしてみると納骨堂ほど素晴らしいお墓はないように思えますが、実際にはそればかりではありません。メリットと思えるものの裏側には必ずデメリットがあります。あととりがおらずにやがて永代供養をお願いせざるをえない人にとっては納骨堂はおすすめできますが、家族のつながりがある人、子や孫がいる人にとっては注意しなければならない点も多々あります。
次に章では、納骨堂のメリットとデメリットについて、墓石との比較も絡めながら、さらに詳しく述べていきたいと思います。
「いまあるお墓を処分して納骨堂を考えている」「墓石にしようか、納骨堂にしようかと迷っている」という方は、まずは墓守の会にご相談ください。あなたのお悩みに寄り添って、公平中立なアドバイスをさせていただきます。専用フォームよりお問い合わせください。