墓守コラム

納骨堂ビジネスの臨界点 過剰供給で「納骨堂が売れない!」

新しいお墓の形として納骨堂が人気です。屋内でのお参りなので天気の心配がいりませんし、バリアフリーが完備されていることで、高齢者や足腰の悪い方々にも安心です。

しかし、最近この納骨堂が「売れない」という声をよく耳にします。特に都心部では自動搬送型の納骨堂(お参りスペースと遺骨の保管スペースを分けて、お参りの時に遺骨が自動搬送されるシステム)の売れ残りが顕著です。

この記事では、納骨堂の「いま」をお伝えし、供養をビジネスとすることの限界について考えます。

自動搬送型納骨堂は頭打ち 都心部の業界の声

なにも納骨堂そのものが悪者というわけではありませんし、それを必要としている人のニーズにきちんと答えています。

「天気に左右されない」

「お掃除の負担が不要」

「街中にあって便利」

「お墓を建てるより安い」

これらに加えて、「墓じまいが不要であること」「そのまま寺院に永代供養をしてもらえる」などの未来に向けての安心感も、納骨堂が人気を得ている理由でしょう。問題は、これをビジネスとして乱発している業者側です。

近年、新しい納骨堂として注目されている「自動搬送型」の納骨堂。建物1棟全体を納骨堂とし、参拝ブースと遺骨の保管場所を分け、お参りにくると遺骨がベルトコンベヤで自動搬送される、というものです。

省スペースでたくさんの遺骨を受け入れられることから都心部を中心に流行しましたが、売れ残りが目立ちます。業界関係者からも「自動搬送型はもう売れない」「どんなに便利でも供給過多。乱発しすぎ」などの声が聞こえます。

また、一級建築士の資格を持つとある僧侶は「50年もすると建物は激しく老朽化する。その時に数億円規模になるであろうメンテナンスの費用をどこから捻出するのだろうか」と話します。こうした理由から年間管理料の値上げが懸念されます。

お墓選びは、安さや便利さだけで選ぶと痛い目にあいます。大切な家族やご先祖様のお骨が眠る場所だからこそ、10年、30年、50年と、長い時間を見据えた判断が大切なのです。

埋葬や供養をビジネスにしたことのツケ

この納骨堂ビジネスの供給過多問題。実はかつての霊園ブームの状況に似ているような気がします。

戦後からバブル期にかけて、お墓を建てる人が急増し、日本中が霊園ブームに沸きました。山の斜面を切り崩した大型霊園はあちこちで見られますが、それらが令和になった今、完売しているのかというとそうではなく、未だに売れ残り区画が目立つ霊園もあちこちにあります。埋葬や供養をビジネスにして考えることで、将来的にこのようなツケが回ってきてしまうのです。

墓地は本来「非営利性」や「永続性」をもとに運営されなければならないと国も示していますが、お金儲けを目的とした納骨堂や霊園の運営で、最終的に迷惑がかかるのは、結局霊園の利用者です。

これからのあるべきお墓のありかた

自動搬送型の納骨堂の一番こわい点は、手を合わす場所と遺骨が置かれる場所が別だということです。万が一大きな地震がやってきた時に、遺骨を集めるバックヤードがぐちゃぐちゃに損壊したら、私たちはどうやってご先祖様の遺骨を見つけ出せばいいのでしょうか。

遺骨がある場所に手を合わす。これがお墓の基本です。墓石の下に遺骨は眠りますし、納骨堂でも遺骨に向かって手を合わすタイプのものもたくさんあります。大事な遺骨がどのように扱われるのか、きちんと把握して納得いくものを選びましょう。

また、お寺や業者側は、等身大にあった墓地や納骨堂の運営が求められます。ハコモノを売って収益をあげようとすることよりもむしろ、利用者の「心」に寄り添う取り組みが求められます。生きることの辛さ、死別の悲しみ、死の恐怖、こうした人々の悩みや苦しみに寄り添い、取り除くことこそが、お墓や納骨堂の本来の目的であるはずだからです。

私たち墓守の会は、霊園開発や墓石建立よりもまず先に、みなさまの「お墓参り」を大切にします。なぜなら、それこそがみなさまの幸せにつながるものだと確信しているからです。

お墓のこと、お墓参りのことでお悩みやお困りがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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