樹木葬といえば、「安い」「エコ」「明るい雰囲気」なんていう印象の強い、最近人気のお墓です。しかし、一部の樹木葬の霊園では「お線香をあげられない」「お線香をあげる場所が限られている」ところもあるそうです。これはゆゆしき問題です。
目次
お線香の果たす大事な役割
私たちはこれまで、お墓の前で当たり前のようにお線香をあげてきました。お線香には「その場を清める」という大事な大事な役割があります。
清めることがなぜ大事なのか、少し詳しく解説します。
たとえば、あなたがこれから大事なお客様をおうちにお招きするとしましょう。まずはじめに何をしますか? 家の中をきれいにしますよね。いらないものを捨てて、ものを整えて、掃除機や雑巾をかけます。そして掃除を一通り終えたあとは、お花を活けたり、お香を焚いたりして、より相手が喜んでくれるよう、おもてなしの準備をします。
私たちは、目に見えるものを整理整頓したあとに、目に見えないその場を空気を清めようとします。「なんだか心がホッとする」と言ったような、うまく言葉にはできないけれど心で感じる部分を大切にしていることの証です。
これは、お墓参りでも同じです。お墓参りはご先祖様をお迎えすることです。まずは目に見えて、手で触れることのできる墓石をきれいに掃除をし、その上で、お花を活け、ローソクの火を灯し、お線香の煙を燻らせることで、空気が清らかになります。こうやって、あちらの世界からやって来て下さるご先祖様の歩く道がきれいに整うのです。
お墓参りは「心」を通じたご先祖様との向き合いです。だからこそ、目に見えないものを整え清めることが、とても大切なのであって、そのためのお線香なのです。
墓前で線香があげられないことの物足りなさ
さて、こうしたお線香を一部の樹木葬の霊園が禁じている。多くの場合、火事を恐れてとのことだそうです。
火事を予防する方法はいくらでもあります。たとえば手元に必ず水を置いておく。火事の心配のない香炉をひとつ置いておくなど。お線香という習慣をなんとか継続させようとせずに、省いてしまおうという魂胆がなんとも浅はかです。
「お線香などなくても、手を合わせる想いが大切だ」という人もいるでしょうし、それはもっともな言葉だとです。
しかし、死者に香を手向けるという習慣は何千年前から私たちの中で行われてきたことです。たとえば古代の中国、儒教の考えでは死者の魂と遺骨が結びつくように、天に香気を燻らせ、地面には香気を含ませたお酒を土に撒いたと言われています。この作法は日本にも伝播し、いまに息づいているわけです。
何千年も長い期間、人々の間で続いてきたものがある日突然断ち切られることで、私たちは「なんとなく言葉にできない、でもなんか物足りない」というような心持ちになります。
お線香をあげなくっても、誰も何も困りません。でも、あなたの中に沸き起こる「なんか物足りないな」という想いはいったい何でしょう。その答えは、ご先祖様の「あれ?お線香あげてくれないの?」という言葉そのものです。
あなたには、ご先祖様のその声が、きちんと届いていますか?
最近は、コンパクトで安価なものや、期限付きの契約で墓じまいや承継の不安のない墓石も出回っています。いまを生きる人たちに負担を強いないお墓もあることを知っていただき、どうぞ、マスコミの宣伝やイメージだけで選ばないようにしてほしいと思います。
真新しいことから脚光をあびる樹木葬ですが、墓石に慣れ親しんできた私たちには意外な落とし穴があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。墓守の会はあなたの心を満たしてくれるお墓つくりのお手伝いをいたします。お墓のことでお困り、お悩みの方はどんな些細なことでもご相談ください。