墓守コラム

お寺の中にお墓を持つ 寺院墓地は「人」とのつながり重要

お寺不遇の時代と言われています。浄土宗の僧侶でジャーナリストの鵜飼秀徳さんの『寺院消滅』が発行されたのが2015年。2040年までに35%もの宗教法人が消えるだろうという内容に衝撃が走りました。

お寺は私たち民衆の心の拠りどころでもあります。お寺には住職やその家族が住んでいますが、常に「人」がいるということが、公営霊園や民営霊園にはない寺院墓地の最大の魅力であり、満足度を分かつポイントだと考えます。

加えて、寺院墓地を巡る厳しい環境があるのも事実です。地方や郊外などでは特に、無住(住職がいない)のお寺、さらには廃寺同然のお寺も目立つようになり、利用者にとっては不安そのものです。

お寺の境内の中にお墓を構えることの是非を考えてみましょう。

寺院墓地には2つある 檀家向け墓地と事業向け墓地

まずは大前提として、お寺がどんな場所なのか、そして寺院墓地とはどのような墓地なのか、基本のキを押さえておきましょう。

そもそもお寺は、住職のものではなく、檀家全員ものだということを知っておかなければなりません。

檀家みんなでお金を出し合って自分たちの先祖を供養する場所を維持していく。お寺の掃除もみんなが集まって行う。本堂が故障したらみんなでお金を出し合う。そうした檀家で作り上げたお寺という空間に、僧侶を招き、住まわすのです。お寺に住む僧侶のことを「住職」と呼ぶのはそのためです。

明治維新以降、当時の政府が僧侶の還俗化を進めたことにより、今に至るまで住職の世襲が当たり前になりました。お寺は住職一家のもののように思われていますが、実際にはそうではありません。お寺はあくまでも檀家のものなのです。

さて、それらを踏まえた上で、寺院墓地は厳密には次の2つに分けられます。

1つは、檀家向けの墓地。当然ですよね。だってお寺は檀家の檀家による檀家のためのものですから、そのお寺の境内にお墓を建てるのも当然檀家としての権利です。

そしてもう1つは、霊園事業としての墓地です。要は、檀家でない人のために売り出される墓地のことです。お寺の境内だけでなく、境内から離れた土地を霊園として造成して売り出します。「◯◯寺霊園」という名称のところもあれば、「◯◯メモリアルパーク」のように名付けているところもあります。そう考えると、事業向け墓地は民営霊園に分類されてもよいのかもしれません。

寺院墓地一番の特徴は、住職らの「人」とのつながり

冒頭でも触れましたが、寺院墓地の最大の特徴は、なんといっても住職やその家族など「人」との関わり合いがあるという点です。さらに踏み込んでいうならば、寺院という神聖な空間の中で仏様に守られているという安心感や仏教の教えにいつでも触れられることができる宗教性。費用や利便性などとは異なる「目に見えない部分」の付加価値ではないでしょうか。

人間は人とのつながりで救われる生き物です。ましてや亡き人や先祖の供養という、目に見えない想いを託すのがお墓です。そのお墓をどんな人に守ってもらっているかというのは、とても大きな効能を私たちに与えてくれます。

「お墓参りに行くごとにお寺さんと世間話する」「お寺の人たちはいつも優しく受け入れてくれる」など、こうした人とのつながりは、公営霊園や民営霊園ではあまり感じられません。

また、お寺の境内には他の場所にはない静かで清らかな空気が流れています。そんな中でのお参りに、きっとあなたの心も静まり、満足いくお墓参りができるでしょう。

人に依存するからこそ、相性に差が出る

人とのつながりが最大の特徴ということは、裏を返せば住職によって満足度が異なるということです。これが寺院墓地の諸刃の剣の部分です。

いい住職、気の合う住職であればなんら問題ありませんが、そうでないときは地獄です。お寺の中にいながら浄土ではなく地獄を味わうのですから、こんな辛いことはありません。

「あの住職嫌いやから、お墓を引越ししたい」

「お布施にお金がかかるから墓地を替えたいけど、住職にどう話そうか・・・」

こんなお悩みや日常茶飯事のように私たちのもとに寄せられます。

墓地の管理清掃も、住職やお寺の人たちによってこまめに手入れされているところもあれば、そうでないところもあります。まさに人の資質が、寺院墓地の満足度を左右するのです。

檀家であることを負担に思う人も

また、檀家のものであるお寺の中にお墓を持つということは、自分自身も檀家になることを意味します。

お寺は、檀家みんなでお金を出し合い、奉仕作業に努めることで維持されます。こうした取り組みを負担に感じるのであれば、寺院墓地は避けるべきでしょう。

最近ではお寺側も敷居を下げる取り組みに励んでいます。入檀義務のない墓地、檀家よりもよりマイルドな「サポーター」という位置付けを設けるなど、寺院墓地を巡る環境もだんだん変わってきているようです。

いずれにせよ、お寺の境内に墓地を持つことでどのような義務や条件が発生するか、事前に確認しておくことが大切です。

いかがでしたしょうか?

墓守の会では墓地や墓石だけでなく、お寺とのつき合いなどさまざまな仏事のご相談にも応じます。お困りやお悩みのある方は専用の申し込みフォームよりご相談ください。

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