新しくお墓を考える時に、「石のお墓にしようか」「最近よく耳にする樹木葬にしようか」と迷う人が増えています。これまでお墓のスタンダードといえば墓石、つまり石のお墓でしたが、ここ最近では樹木葬を検討する人も増えています。
とはいえまだまだなじみの薄い樹木葬。いざ自分が樹木葬にしようとなると、どのようなお墓なのか、どうお参りすればいいのか、故人様きちんと供養されるだろうかなど、いまいちピンとこない人も多いのではないでしょうか。
ということでこの記事では、墓石と樹木葬の違いを徹底考察いたします。両者を比較して、あなたのお墓選びの参考にしてみてください。
目次
2019年のデータでは、樹木葬が墓石を上回る!
株式会社鎌倉新書によるアンケート調査では、2019年に樹木葬を購入した人の割合が急増し、ついに一般墓と抜いて1位に躍り出たそうです。
2018年 | 2019年 | |
1位 | 一般墓(41.2%) | 樹木葬(41.5%) |
2位 | 樹木葬(30.0%) | 一般墓(27.4%) |
3位 | 納骨堂(24.8%) | 納骨堂(24.9%) |
※ 株式会社鎌倉新書「第11回 お墓の消費者全国実態調査(2019年)」(2020年)より
もちろんここにはバイアスがかかっています。アンケート調査の対象は、鎌倉新書が運営するお墓のポータルサイト「いいお墓」に資料請求、相談、お墓を購入した人たちに限られるからです。つまり、インターネットでお墓を検索するユーザー層に限られているということで、実数はもう少し一般墓の割合が高くなることが予想されます。
とはいえ、年月の推移とともない樹木葬の比重が大きくなっているという事実は見逃せません。2010年時点では約9割の人が一般墓を購入していたこともあわせて報告されており、人々のお墓に対する考え方が大きく変化したことが分かります。
しかし実際にはあなたの周りで「樹木葬を買った」という人はまだまだ見当たらない、あるいは少数なのではないでしょうか。まずは新しいお墓のスタイルである樹木葬がどういったものなのか、そのメリットとデメリットを押さえていきます。
樹木葬のメリットは「安い」「きれい」「墓じまい不要」
樹木葬のメリットとして挙がる声に、「価格が安い」「明るくてきれい」「環境に優しい」「墓じまいが不要」「自然に還る感じがする」などがあります。
樹木葬は、安い
墓石と比べてみると、樹木葬はかなり安く手に入れることができます。墓石を建てるためには墓地と墓石で200万円前後の費用がかかると言われていますが、樹木葬は50万円から100万円が相場です。
樹木葬は、明るくきれいで自然に還る感じがする
硬くて地味な石のお墓よりも、きれいではなやかなや草花を好む人が多いようです。また、「樹木葬」ということばの響きから、「エコ」「クリーン」「自然回帰」という印象を抱きます。
樹木葬は、墓じまいが不要
永代供養を併設している霊園であれば、墓じまいは不要です。仮に墓じまいをしなければならないとしても、墓石の解体と比較すると手間や費用は大きく軽減されるでしょう。
さて、このように見ているといいことばかりのように思える樹木葬。しかしよくよく考えていただきたいことがたくさんあります。メリットは見方を変えればデメリットでもあります。次の章では樹木葬のデメリットを確認していきます。
<h2>樹木葬のデメリット 家族とのつながりを大切にしたい人には不向き?
ここからは樹木葬のデメリットを考えながら、墓石との比較をしていきます。
樹木葬には何人の遺骨が入る? 場合によっては墓石の方が割安
樹木葬のお墓には、いったい何人の人の遺骨を納めることができるのでしょうか。細かく見ていけばいろいろなタイプがあるのですが、その多くは2人までとしています。自分たち夫婦だけで入ればそれでよしとする傾向にあり、あととりがいない世帯にとって樹木葬は適最適かもしれません。
しかし、親子、さらには孫とのつながりがある場合、必ずしも樹木葬がよいとは限りません。むしろ、石のお墓を用意して親子が世代を超えて利用できる方が、広い意味では子孫に迷惑をかけずに済みます。同じお墓を利用するのであれば、墓石の方が合理的かつ経済的なのです。
樹木や風や雨に弱く、すぐ枯れる
樹木葬で植えられる草花は大変美しく、お参りに来るこちらの心を和ませてくれます。しかし同時に草花は風や雨に弱く、場合によっては枯れてしまうことも考えられます。
それに比べて墓石は、風や雨などなんのその、ちょっとやそっとのことでは動じません。枯れるどころか百年も千年も続いているお墓が日本中いたるところにあります。
樹木葬も土に還らない
「樹木葬だから土に還り、墓石だから土に還らない」と思い込んでいる人が実に多くいますが、実際にはそういうわけではありません。
墓石の下部の遺骨を納める場所のことを「カロート」と呼びますが、このカロートの構造は地域によって異なります。遺骨を土に還すところもあれば、焼骨を骨壷のまま保管する地域もあります。これはその地域の風習や宗教的な考えなど、さまざまな要因が重なり合って行われているのですが、最終的には骨壷から遺骨を出して土に還すことは可能です。
実はこれ、樹木葬も同じなのです。樹木葬でも、その多くはカロートを用い、骨壷のまま遺骨を埋蔵します(里山型の樹木葬では遺骨を土に還します)。これは、将来的な永代供養を前提としているからです。樹木葬だから土に還るわけではなく、遺骨の取り扱いは墓石とほとんど変わらないと思った方がよいでしょう。
まとめ 一代限りなら樹木葬 世代を超えていくなら墓石
いかがでしたでしょうか。樹木葬のメリットとデメリットを見ながら墓石との比較をしてみました。あなたの家にとってどちらのお墓の方がよさそうですか?
筆者の結論としては「一代限りなら樹木葬 世代を超えていくなら墓石」と言えます。しかし正直なところ、トレンドとは逆行しますが、お墓の本質を考えてみると、一代限りでも墓石の方がいいのではないかとすら思います。
墓石にはその家や故人様の名前が刻めます。この「彫刻」こそ、墓石にしかできないことなのです。亡き人がかつてたしかにこの世界に生きていたという事実、歴史を、石に刻み込んで後世に伝えていく。
お墓とは亡き人とこの世に生きる人が出会う場所ですが、彫刻こそがお墓が石である最大の理由かもしれません。実際に樹木葬ですら、石のプレートやモニュメントが用いられ、そこには故人の名前が刻まれています。
時代のトレンドから樹木葬が選ばれていますが、長く広い視点から見たときに、墓石の存在感が動じることはないでしょう。
あなたは石派? 樹木派? ご家族みなさんで話し合ってみてください。