最近では、テレビや雑誌やインターネットなど、さまざまなメディアから「墓じまい」という言葉を見聞きするようになりました。いまあるお墓を解体して、新しいお墓にお引越しする人が増えているわけですが、その引越し先として納骨堂や樹木葬などの新たしいタイプのお墓も選ばれています。
そうすると、必然的に墓地の空きが増えてきます。これは言い換えれば、これまで人気が高くて手に入れにくかった公営霊園の好立地な区画も手に入りやすくなっている、ということを意味します。
墓守の会は、私たちが少しでも幸せに生きるためには、納骨堂や樹木葬よりも石でできたお墓の方がよいと考えますし、お墓を建てるのであれば断然公営霊園をおすすめします。
つまり、これからお墓を建てようと考えている人にとって、昨今の墓じまいブームは追い風とも言えるのです。
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「墓地の運営は自治体が行うべき」と考える国の基本方針
前回の記事『お墓作りは公営霊園! 4つの理由から徹底解説』でも解説しましたが、公益性、永続性、非営利性の3点から、国は墓地の運営は基本的には地方自治体が行うべきという方針を打ち出しています。
つまり、「みんなに平等で、倒産の恐れもなく、お金儲けに走らない」という条件を満たすには、地方自治体が運営するべき=公営霊園であるべきなのです。
しかし、実際には公営霊園だけではお墓の数は絶対的に足らず、寺院墓地や民営霊園がないと成り立たないのが実情です。
今現在でも新しくお墓を建てようと、人気の公営霊園を申し込んでみるものの、空きがないために手に入らないというのはよく聞く話です。そうすると次の選択肢として寺院墓地や民営霊園を選ばざるを得なくなります。
墓じまいが増えて、空き墓地が増えている
しかし、冒頭でも触れたように、ここ数年の墓じまいの増加により、公営霊園は求めやすくなっています。墓地を返還する人が増え、募集倍率が低下しているのです。
わたしたち墓守の会は、毎年のように行われる各自治体の公営霊園の募集状況を追いかけていますが、ここ5年の推移を見るだけでも、お墓をめぐる状況は大きく変化しています。
何が起きているのかというと、公営霊園の募集区画数が増加する一方で、申込者数が減っています。これにより申し込みによる抽選倍率が大きく低下しているのです。これまでは5倍や10倍が当たり前だった地域でも2倍や3倍という低倍率が目立ち、中には1倍や、申込者ゼロという区画もあります。
墓じまいが多いことと、納骨堂や樹木葬などの選択肢が増えたことから、公営霊園の区画数に少しずつ余裕ができはじめてきており、この流れは今後も続いていくことでしょう。
お墓を巡る未来予測
墓じまいが進み、納骨堂や樹木葬が増えていくという流れは今後も変わらないと思われますが、ある地点で上げ止まりとなるでしょう。
一方で、墓じまいが増えて墓石を手放す人が増えているものの、こちらもある地点で下げ止まりとなるでしょう。墓じまいがずっと続いてこの社会から石のお墓が消えてなくなるのかというと、到底そうは思えません。
なぜなら、納骨堂や樹木葬を選ぶ人の多くが「本当は石のお墓を建てたいけれど・・・」という想いを持っているからです。
「本当は石のお墓がいいけれど、高額すぎて手が出ない」
「本当は石のお墓がいいけれど、あととりがいないからお墓を建てても意味がない」
「本当は石のお墓がいいけれど、もしかしたら引越しするかもしれない時が大変」
こうした声をよく耳にするのです。
墓石、納骨堂、樹木葬、そして永代供養。これらはある一定の割合でバランスよく棲み分けされるのではないかと予測します。ライフスタイルも多様化する中で、供養のありかたも多様化していくと思われますし、そうあるべきです。
しかし、そんな中でもやはり墓石は根強く支持されるでしょう。人類には何千年も昔から石を用いて死者を埋葬供養してきた歴史があります。石のお墓に懐かしさを覚えるという人はいまでも実に多くいます。
もちろん、墓石そのもののありかたは変わっていくのかもしれません。個人化、小型化、有期限化などなど、現代に適したあるべき墓石のスタイルが模索されています。
さて話はそれましたが、石のお墓を希望する人はの割合は一定のシェアが見込まれ、そんな人たちにとっては公営霊園の「空き余り」の状況は追い風に違いありません。
このまま墓じまいが進んでいくと、将来的には墓地価格の下落も見込まれます。そもそも公営霊園は住民の公共インフラですから安くあるべきなのですが、自治体によっては民営霊園よりも高い値段が設定されているところもあります。
これまで人気が高くて手に入りづらかった公営霊園が、安い値段で条件のいい区画を手に入れやすくなるという日も、遠い未来ではないように思えます。
私たち墓守の会は、近畿や中四国を中心に、西日本の公営霊園の状況をくまなくチェックしております。お困りの方、お悩みの方、まずは話を聞いてみたいという方は、まずはお気軽に、墓守の会へご相談ください。