墓守コラム

冬の時代を迎える民営霊園 そのデメリットと功績

民営霊園とは、民間企業によって運営されている霊園のことですが、国は原則的に営利追求を目的とする民間企業による墓地運営を認めていません。「認めていないのに民営霊園が存在するの?」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、民営霊園がどのように運営されているのか、また実際に墓地を購入しようとした時にどのようなメリットやデメリットがあるのかをご紹介いたします。

民営霊園は、宗教法人と民間業者が手を組んで運営している

国は霊園の管理運営について、「市町村等の地方公共団体が原則であり、これによってよりがたい場合であっても宗教法人、公益法人等に限る」という指針を示しており(厚生労働省生活衛生局の通達第1764号『墓地経営・管理の指針等について』)、この指針に則って都道府県知事は墓地運営の許可を判断します。

つまりどこにも「会社法人」や「民間企業」などのことばが見当たらないにも関わらず、公然と「民営霊園」が存在しているのが実情です。これはいったいどういうことでしょうか。

結論を言いますと、あくまでも墓地の管理者は宗教法人や公益法人とし、実務(墓地の管理や販売、施工など)を専門業者に委託しているという形をとっているのです。わかりやすく言ってしまうと、「お寺と業者が手を組んで運営している」ということです。

どこまでが宗教法人の仕事で、どこからが民間業者の仕事か。これは霊園によって異なります。墓地の販売や管理はお寺がして、墓石の販売や工事を専門業者を委託するところもあれば、墓地の販売や管理からすべてを業者が請け負うところもあります。

お寺側からすると、煩雑な霊園の管理業務を専門業者に任せることで、普段のお寺の法務に専念できますし、業者側としても自社専用の墓地を持つことでビジネスを展開できます。民営霊園は、宗教法人にとっても、民間業者にとっても「WIN-WIN」なのです。

民営霊園は、利用者にとっても「WIN」なのか?

さて、双方にメリットのある民営霊園は、はたして利用者にとっても「WIN」なのでしょうか。

どの霊園が一番のいいのか。これは最終的には利用者本人がどこにメリットを感じるかによるので、一般論で語ることはできません。しかし、公営霊園と比較することで、民営霊園ならではのいくつかのデメリットが挙げられます。

比較的費用が高い

民営霊園は墓地の永代使用料が比較的高い傾向にあります。公営霊園と違って税金が投下されるわけではありませんし、業者側は墓地を造成する段階でその費用を先行投資しています。こうした背景を考えると、民営霊園が割高になってしまうのはある意味当然のことなのです。

倒産の恐れがある

民営霊園の倒産(経営破綻や法人設立許可の取り消し)はすでに前例があります。万が一霊園の管理会社が破綻に追い込まれてしまったら、霊園事業をどこか別の法人に引き継がなければなりません。利用者の永代使用権は可能な限り守られるものの、落ち着いてお墓参りもできないでしょう。

指定石材店制度がある

民営霊園では墓石の施工業者が指定されており、利用者が自由に石材店を選ぶことなどできません。これは、霊園の造成段階で民間業者が資金をつぎ込んでいるからです。墓地を販売することで投資分を回収し、墓石を建立することで利益を得る仕組みになっているため、他の石材店による施工工事が認められないのです。

このように民営霊園の背景を見てみると、必ずしも「三方よし」とは言えないかもしれませんね。宗教法人と石材業者にとっては「WIN」でも、利用者にとっては「WIN」と言い切れない側面があるように思えます。

ただし、なんだかいいとこなしのように思える民営霊園ですが、実際にはそんなことはありません。次の章では民営霊園ならではのメリットや功績をご紹介します。

民営霊園だからこそのメリット マーケティングに裏打ちされたサービス

少なくとも民営霊園がなかったら、墓地不足問題はさらに深刻さを増していたでしょう。また、営利目的の民間業者だからこそ、その時代の人々のニーズをどこよりも先にキャッチし、それに応える霊園開発やサービスを展開してきたという側面もあります。

たとえば、一部の霊園では当たり前のように行われている参拝者の送迎サービス。最寄りの駅と霊園をマイクロバスなどで送迎するのですが、こうしたサービスは公営霊園や寺院墓地では見られません。

期限付き墓地、樹木葬、ペットとともに入れるお墓など、こうした新しいタイプのお墓をどこよりも先に打ち出すのも民営霊園です。ニーズを見極め、そこに訴求するサービスを提示して、付加価値に見合った対価を得るという狙いは、資本主義社会の今日においてはなんらとがめられるものではありません。

たとえば、国内の公営霊園でもっとも早いとされる樹木葬墓地は横浜市営メモリアルグリーンですが、開設されたのは平成18年(2006年)。しかし国内初の樹木葬墓地は平成11年(1999年)に岩手県一関市の祥雲寺によって開設された「樹木葬公園墓地」で、7年も先行しています。

昨今のライフスタイルの多様化に伴う「お墓の多様化」を推し進めた役割として、民営霊園の功績は大きく、その存在は見逃すわけにはいかないのです。

私たち墓守の会としては、国が定める方針通り、公営霊園でのお墓づくりをおすすめしていますが、この記事を通じて、民営霊園のデメリットだけではなく、民営霊園だからこそ果たせる役割をご理解いただけたのではないでしょうか。

バブル期のお墓ブームに便乗して、日本中のあちこちで山を切り崩した大規模霊園が作られましたが、コンパクトなお墓が求められるこれからは民営霊園にとってはきっと冬の時代がやってきます。そんな令和の時代にどんなサービスを打ち出して新時代のお墓文化を切り開いていくのか。民営霊園の今後に注目です。

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